いろこよみ「栗梅」2019秋

鬼皮を剥いて、何度か茹でこぼしてから砂糖を入れて煮込むと、煮汁に滲み出る濃厚な赤み。名前からして美味しそうな「栗梅」という色を知ったとき、これは栗の渋皮煮の色だと思った。

栗梅とは赤みのある栗色のことで、「栗色の梅染」が略されたものだという。栗色の布をさらに梅の幹を刻んで煎じて煮出した汁で染めて、赤みを加える、その工程は料理を思わせる。

料理と染色は似ている。刻み、火を使い、素材を化学変化させて、一方は食べて美味しく消化吸収しやすいものに変え、一方は色を抽出して繊維に定着させる。料理は染色よりもずっと身近だけれど、同じくらい創造的な、一番身近な日々の創作活動なのだと思う。

渋皮煮をつくるのは、栗を栗梅色に染めること。もちろん青菜を茹でる、キャベツを炒める、それだけでも色の変化は楽しめる。そういえば火加減のうまくいった素材は色もいい。料理とは色をつくること。今晩はそんな気持ちで台所に立ってみたい。

 

らでぃっしゅぼーや「おはなしsalad」2019秋号