パパイヤの理由

 

最近の娘は場所を指定したがる。床をたたいて、ソファをたたいて、ちえちゃ、ちえちゃと言う。ここに来て、ここに座って、ここにいて。要は近くにいて、ということなので、まあかわいい。

同じくベッドを叩いて、パパ、パパ。こっち、こっち。わざわざぐるりと回って歩いてベッドまで行って、叩きながら言う。これは、あっちに行け、ということなので、夫はかわいそう。

わたしに対して、あっちに行ってとか、顔をプイっとするということは全くないけれど、夫にはする。あっちいけ、プイプイ、いやー、ぎゃあああああっと大泣きするときもある。

一番顕著なのは寝る前。娘はなかなか寝付かない、寝かしつけがかなり面倒くさい、しんどいタイプで、卒乳後はその内容もかかる時間も常に変化していて、ああ楽になったなあ、ああしんどいなあ、というのを行ったり来たりしているが、内容の基本はわたしとイチャイチャすることで、わたしを仰向けに寝かせて(横向きだったりうつ伏せだったりすると上を向いて!と向きを変えてくる)、マウントをとって、ぶちゅーっとしたり、くてんと身を預けてきたり、後ろにごろんしたりを繰り返す。チューはかなり熱烈で、わたしはよだれまみれになる。そこに夫が紛れ込んでくると、すごく嫌がる。

夫が「おとうさんにもチューして」と隣に寝転ぶと、パパこっち、パパこっち、と夫の布団をバンバン叩く。昨日は夫がしぶとくとどまったので、大泣きして激怒して嫌がった。夫はそんなに泣かれてかわいそうだけれど、そういうところだよ・・・とも思う。我が家の夫(父)は嫌がられるとかえって面白がってやるところがあるから、わたしも娘みたいに、やめてくれ!あっちいってくれ!と、なることが多々ある。

そういうやりとりから学んだのか、娘はついに「パパあっちいって」という言葉を覚えてしまった。まだまだつたない発音がほとんどなのに、「パパあっちいって」はちゃんと言えている。

なんで夫を嫌がるのか。そりゃあ圧倒的にわたしといる時間の方が長いし、わたしの方がお世話しているけど、それはもう一人のメンバーを嫌がる理由にはならないと思う。「もっとわたしのことを気にかけなさいよ」的な思いの裏返しなんだろうか。でももっと直感的な、ただあっちいってほしいだけ、という感じがする。

寝る前に限って考えれば、お母さんとの時間を邪魔しないで、というのはあるだろう。独占欲とか縄張り争いとか。あと決まった場所にいてほしい、てのもあるのかもしれない。娘なりに求めている秩序がある。夫いわく「最近娘は場を支配したがる」。

うーん、どれもしっくりくるようなこないような。娘の、パパいや!というのはなんか、定型的というか、仕組まれてるプログラムみたいな感じなのだよな。

なんなんだろうなあと思っていたら、ある朝夫が「担当者以外は嫌ってことだよ。パパはチューとか夜一緒に寝るとか朝起きた時隣にいる担当者じゃないってことなんじゃない」と言って、それだ!と思った。

そういうのはお母さんが担当なのであって、担当外の人はやめてくださいっていう、これもやっぱり娘が求めている秩序の一環なのだ。パパが隣にいること、パパにチューしたりされたりすることは秩序が乱れるから嫌なのであって、パパが嫌なわけじゃないのだ。自分からギューっと夫の足にまとわりついてく時もあるし、遊ぶ時は楽しそうだし。

これもイヤイヤ期、秩序の敏感期の変形なんだと思ったらとても腑に落ちた。ちょっと目から鱗だった。

最近、決まりをとても守りたがる娘。脱いだ服はぜったいに洗濯カゴに入れるとか、ゴミは必ずゴミ箱に捨てにいくとか、外に出る時はコートと帽子をかぶるとか。昨日は外に出たら急にやる気がなくなって、全然歩かなくなってしまって、何なのどうしたのと思ったら、コートを着てないのが嫌だったみたいで、着せたら揚々と歩き出した。手がつけられなくなるほど泣き叫ぶとかはないけど、順調にイヤイヤ期に入りつつあるなあというこの頃。