いろこよみ「氷のかさね」2018冬

 

厚く張った氷。さくさく鳴る霜。静かに降る雪。冬の冷たいものは白いから、白を着ること、それも全身となれば寒々しいようで控えてしまうのだけれど、平安時代からの衣装配色「かさねの色目」には、氷のかさねという、白に白を合わせるものがある。

当時の人々はその季そのままを表現することを何よりも尊び、糸の精錬の具合を変えたり、糊を引いたり、うすく染色を施したりと、光沢、透過性、厚み、色、それぞれがわずかに違う白をかさねた。静かな冬景色のなかの、繊細な白のグラデーション。いまのファッションの感覚では測れない、自然へのあこがれが迫ってくるようで、ぞくりとする。

年が明けると、寒さのなかでわずかに日が延びたことを感じる。白は光の色でもある。氷のかさねは、日照時間の短い冬に、光を反射させる効果もあっただろう。ともすれば気持ちが重くなる、特別に冷え込んだ日にこそ。白い服が着たくてたまらなくなっている。

 

おはなしsalad 2018冬号 https://www.radishbo-ya.co.jp/rb/salad/catalog/1812/