いろこよみ「常磐色」2017冬

 

子どもの頃はだんぜんクリスマスのほうが好きだった。鈴の音、教会と天使、クリスマスツリー。そうしたものから異国の聖なる日を想像すると、胸が締めつけられてドキドキした。

実はイエスの降誕日ははっきりとはわからないらしい。クリスマスの日付は土着的な冬至のおまつりにのっとったもので、常緑樹を飾るのもキリスト教以前の風習だった。お正月の門松も、冬に常緑樹を依り代とするものだ。この緑の色が常磐色、常磐とは永遠、英語でいうエバーグリーンで、人は寒さにも枯れない緑を生命力の象徴とした。東西で同じ発想をしているのが意外だけれど、人と自然の関わりにはなにか共通の基盤があるのだろう。

さて、今のわたしはすっかりお正月のほうが好きになっている。大掃除、しめ縄、鏡餅、おせち。完璧にはできなくても、ひとつひとつの意味がわかると準備も楽しい。晴れ着は松の描かれたものがいい。縁起物といえば松。奇をてらわない、王道に憧れる。

 

おはなしsalad2017冬号 https://www.radishbo-ya.co.jp/rb/salad/catalog/1712/pc.html