見えないものと生きている1 発酵のこと

  秋に、ワインをつくっている知人の手伝いでワイン用葡萄の収穫をした。それでワインの作り方を聞いたら、とても簡単で驚いた。 収穫した葡萄を洗わず、つぶして、放っておく。これだけ。洗わないのがポイントで、皮についている酵母菌が葡萄の糖をつかって発酵することで、アルコールが生成して、ワインにな…

2018年01月30日

降りていく系と発散する系

  雪で外を歩きにくくなったので、家で簡単なヨガをやったりマタニティビクスをやったりする。やっていると、この一つの身体に対して、鍛えるべき、動かすべき、柔らかくしておくべき部位というのはそんなに変わらないんだなと思うけど、アプローチは全然違う。いや、動きとして似ているものはわりとあるから、…

2018年01月17日

鰤のアラが重い

  去年は大根がたくさんとれたので、ブリ大根を何度も作った。切り身で脂ののったものになかなか当たらなかったので、アラを買ってみた。アラには、食べようと思えば食べられるのだろうけど、しかしこれ食べるんだろうか、と逡巡させる部位がけっこうあって、目の周りのぶよぶよしたゼラチン質ぽいものとか、内…

2018年01月16日

葛の糸づくり-2 川で糸をとる

  ムロを開けると、納豆から色気をぬいてぼんやりさせた、なまあたたかい匂いがもわっとたちこめて、白いフワフワしたものがびっしりとりついた、全体としては茶色く変色した葛のまわりを、無数の小さい虫が飛び跳ねている。 ただ悪くなっているだけでは…というのは匂いもそうだし、納豆菌による発酵だから納…

2018年01月13日

食費と農業革命

  食事はほとんど自炊で、夏からの数ヶ月は畑の自作野菜で野菜はほぼまかなえて、贅沢しているつもりもなく、冷蔵庫が小さいから気づかないうちに悪くしていて廃棄することもないし、無駄なくやっているつもりなのに、食費が安くならないなあ、とは思っていた。それがこの前、二人暮らしにしては高い、とはっき…

2018年01月11日

いろこよみ「常磐色」2017冬

  子どもの頃はだんぜんクリスマスのほうが好きだった。鈴の音、教会と天使、クリスマスツリー。そうしたものから異国の聖なる日を想像すると、胸が締めつけられてドキドキした。 実はイエスの降誕日ははっきりとはわからないらしい。クリスマスの日付は土着的な冬至のおまつりにのっとったもので、常緑樹を飾…

2017年12月15日

いろこよみ「竜田姫の赤」2017秋

  赤い色の服を着てきたんだよ。男友達が結婚した奥さんとの付き合い始めのころ、嬉しそうに話していた。だからなんだと思いつつ、デートには赤い服がいいらしい、となんとなく覚えてしまった。古来魔除けに使われるなど、赤は力のある色だ。 日本の四季にはそれぞれをつかさどる姫がいる。秋の竜田姫は風の神…

2017年10月01日

JR TOWER SQUARE STYLE 「眠る犬」2017.8

  メキシコ出身の現代美術の巨匠ガブリエル・オロスコの写真作品に、犬を撮ったものがあ る。だらんと脚を投げ出して、目を閉じた犬。彼の写真作品は、多くは意図的な介入があ り、なくてもなぜそれを撮ったのか見るべき視点は明らかなのだけど、犬に関してはいま いち分からず、ただ皮膚感の生々しさと、生…

2017年08月01日

葛の糸づくり-1 採集からムロまで

札幌で葛(くず)布を制作している作家・渡邊志乃さんに、葛の採集からの糸づくりを習った。一日目は葛の採集、ムロづくりのためのススキの採集、茹で、ムロづくりまで。 葛はもともとは北海道には自生していなかったが、根がよく張るので土砂崩れ防止のために持ってこられたのか、物流にまざって入ってきたのか分からない…

2017年07月03日

具体の仕事と働く子ども

  オアハカに到着したのは元旦の朝七時だった。オアハカの朝はメキシコシティやグアナファトの朝とは違っていて、ゆるやかな、ようよう白くなりゆくという時間の尺を感じることができた。オアハカには海もあり、標高は低い。夜行バスで寝ているうちに、メキシコ中央高原からずいぶんと下ってきたのだ。 とぼと…

2017年03月11日