種落ちてまた種になるまでの糧

三人展「窓」俳句と展示

 

3人展「窓」at SAYSFARM GARRELY 2024.11.8(金)〜12.8(日)

木下宝さんの硝子と石田香楠子さんの石の3人展に詩と俳句で参加しました。SAYSFARMはとても好きな場所で、はじめて行った時から熊笹の緑が広がる北側の窓に惹かれていました。そこに障子のように俳句を置かせてもらえたこと、とてもしあわせでした。「窓」や「種落ちてまた種になるまでの糧」といった言葉のイメージが作家のものづくりに響き、鑑賞の際にも何らかのガイドになる、言葉が作品と空間と響き合う場をつくれたのではないかと思っています。

会場では好きな句にシールを貼っていただき、訪れた方にも一緒に景色をつくることに参加いただきました。総票105票。どの句にどれだけ選が入ったのか、こちらに公開します。

適切に作用する言葉の探究に新たな局面が生まれました。貴重な機会をいただき、ほんとうにありがとうございました。

 

春の句

7 宙に浮く水の不思議を見てる春

1 花も鳴くも契るためとはおそろしき

3 握るとも握らなひ手や李置く

吾がための身にあらざるや種浸す

3 山や月酒立ちのぼるごと朧

1 ふらここや遠くに飛べたほうの勝ち

7 春風や足の生えたるランドセル

3 花見酒ゆるゆるしても許すまじ

 

夏の句

2 やはらかくいのち包める浴衣かな

3 親も子を選べぬ風呂に尻二つ

桜鯛食めば腑の透きとほるごと

2 かんたんに捕まりすぎる蛍かな

星涼し喉に仏がおはすとは

4 わかりますけどできないな心太

5 立山を跡形もなく朝曇

8 風吹けば青田地球の毛並かな

 

秋の句

9 種落ちてまた種になるまでの糧

2 窓に露自然の分け身なる自分

2 台風来海掻き混ぜて大漁なり

4 紅葉づりて木々の境を知りにけり

5 つなぐ手の温さが頼り霧のなか

1 柿食えば鐘の鳴るコードを書いて

1 それは今朝葡萄踏み潰した御脚

4 てのひらや粒の零るるソーヴィニヨン

 

冬の句

4 たちまちに色失くて冬来りなば

3 鰤美しもうとりかえしつかぬ夜も

4 冬銀河ひとつくらいはドロップや

3 時雨止む今日何度めの雨あがり

1 薄氷海往く川と行きちがひ

2 熱燗やほとびる臍のやはらかき 

9 かわいいを丸ごと包む布団かな

2 ストーブの緋の炎青の炎呼吸せり