熊本/熊本| 橙書店とmuseum

 

 

八代のあと、橙書店と坂口恭平のmuseumに行くために、熊本駅周辺に行った。ひらけた、都会の風が吹いていて、文化の濃い土地の雰囲気があった。細川家のあれやこれやとかが、色々あるのだろう、きっと。

橙書店は行ったことがある中でいちばん好きな本屋だった。在庫が全部棚に出ているのか、ものによっては同じ本が何冊も並んでいて、なんだかよかった。棚に並んでいる本がどれも読みたいものだったからかな、ものすごい量があるように感じたのだが、喫茶エリアから本棚を俯瞰したら、意外なほどこじんまりとしていて、読みたい本しかなければ、少しの量でもものすごく多く感じるのだと思った。

ジンジャーエールとブラッドオレンジジュースを混ぜた飲み物が、驚くほどおいしかった。こういうおいしい飲み物をつくる人は凄い。店主の田尻久子さんに、富山から来た旨を話して、橙という漢字についての話、店名の由来をきいた。ピストン藤井さんのイベントを企画していて、でもコロナが流行ってしまって、いったん保留になっているという話もきいた。熊本の街中も路面電車が活躍して走っている。ここでいつか、富山の話がされるのかなと思うと、なんとなく嬉しい。

 

「竹内レッスン! からだで考える」という絵本が目に留まって、買った。一目見て「これは買いだ」と思った。しかして大成功、子どもも大いに気に入って、毎日「おかあさん、からだでかんがえるやろう」と誘ってくる。

からだで何を考えるかというと、進化の歴史である。魚類、両生類、爬虫類、哺乳類、猿、そして人への進化を、身体を使って体感してみよう、というもの。身体の動かし方がイラストつきで載っているので、とても実践しやすい。

そして、やってみると、この身体が魚類も両生類も爬虫類も哺乳類も猿も再現できること、この身体にいきものの進化の歴史が内包されていることが、ありありとわかって、いたく感動した。この身体は物質として宇宙と繋がっているし、構造として猿とも哺乳類とも爬虫類とも両生類とも魚類とも繋がっているのだ。こんなに嬉しいことはない。夜は魚になって横たわって眠る。

赤子が外に出てきて約1年かけて立ち上がるまでの過程も、進化の歴史をたどっているのだと思った。まず羊水(海)のなかにいて、それから外に出てくる。はじめは寝たきり(魚)で、首がすわると首をもたげはじめ、ずりばいで匍匐前進のように動き始め(魚類の陸への上陸、両生類へ。爬虫類期は思い当たらない)、ハイハイで4足歩行(哺乳類)、お尻が高くあがるタカバイ(猿)、それからつかまり立ち(猿)、で、ぴーん!と垂直に立つ二足歩行のヒトに。

胎児が魚から爬虫類と進化の過程をたどることは知っていたから、いつか人工子宮で胎児が育つなら、その過程を目の当たりにしたいと思っていたけど、そうでなくても普通に、赤子は進化の過程に沿って立ち上がっていたのだった…!

 

この感動を、絵本の中身も見せながら、オンラインでの飲み会で話してみたが、あまり伝わらなかった。感動するためのチューニングみたいなものがたぶんあって、生きもの界の魅力と不条理に日々振り回されている人ならば、もすこしチューニング合うかなという気がする。私はこの身体が他のいきものと繋がっていることが、嬉しくて仕方がない。

 

museumは、行ったらパステル画が描きたくなった。吹きガラスもやりたくなった。坂口恭平のお父様がたまたまいて、話すことができた。握手をしてもらった。