世界の同時性

『あおのじかん』

イザベル・シムレール 文・絵  石津ちひろ 訳

2016年6月28日第1刷発行 2018年2月15日第3刷発行 岩波書店

 

「おひさまがしずみ よるがやってくるまでのひととき あたりはあおいいろにそまる」

夕方の青い時間、特に曇りの日はほんとうにそうなる、世界が真っ青になる時間の変遷を世界中の青い動植物を紹介しながら描いたフランスの絵本。

子どもが0歳のとき、どういう絵本を買ったらいいのかわからなくて、よく図書館へ行っていた。それで0歳児向けの絵本を片っ端から出してはめくって、定番以外の何かはないかなと探すのだが、情報量が少なすぎるよなあ(わざわざ本でみせなくても実物とかでいいのでは)、密度がなさすぎるよなあ(なんとなく買う気がしない)、絵が好きじゃないなあ(表紙と中身のイメージが違うことも多かった)、まだ難しいよなあなど、結局なぜ定番の絵本が定番なのか、定番の強さ、その完成度を実感することがほとんどだったなか、赤ちゃん向けじゃない普通の絵本の本棚の「あ行」で見つけたのがこの本だった。

タイトルと背表紙の青が気になって手にとってめくったところ、すごくはまった。
これは子どもがというよりはわたしがまず大好きになった。

まずわたしは青が好きだ。それから、日本の最も古くからある色は赤白青黒で、それはそのまま朝焼け、昼間、夕方、夜にわたしたちを包んでいる色という話というか説というかも好きで、だからフランスでも夕方は青いんだって、夕方を青の時間としたそのタイトルにすごく親しみを感じて、嬉しくなった。

絵は繊細でキャラクタライズやデフォルメがされていなくて、そのまま図鑑のように読めるのもいい。そして文字はすべてひらがなで、1ページあたりの文字量は少なく、擬音語がちりばめられている。情報量と密度がありつつ、わかりやすくて音の魅力にも満ちている、まさにこういうのを求めていた!という、0歳児でも楽しめる絵本だった。

やっと見つけたという甲斐あり、娘もすぐに気に入った。

当時の彼女は、何かがポツンと描いてあるより、細かいものががたくさん描いてあるページが好きだった。いっとき特に好きだったのが、アオガラのページ。

 

 

「アオガラたちは ツピツピッ ツピツピッ こえを そろえて だいがっしょう」

ツピツピっという音も気持ち良かったみたいで、毎日この絵本をわたしのところに持ってきて、このページを開いた。

そしてこの絵に対してのこの文章量。長い文章だと飽きてしまって聞いていられないけれど、ワンセンテンスならいける。それでも子どもはバンバンページを飛ばしたり急にバタンと本を閉じたりはするわけだけど、この見開き1ページを眺めるだけでこちらも楽しいので、突然終わらせられてもストレスにならなかった。

物語はないけれど、時間の変遷が描かれているから、時間は進んでいく。

「あおの じかんの はじまりを つげるのは アオカケスー
あたまの はねを ぴんと たて ジェーッ ジェーッと こえを あげる」

「おなじころ ほんのり あおい ホッキョクギツネが
つめたい くうきの なかへ とことこ わけいっていく」

イワシの群れ、モルフォチョウ、ブルーレーサー、コバルドヤドクガエル、アオミノウミウシ、ヒョウモンダコ、スミレサギ、ブルーモンキー、シロナガスクジラ・・・

青い動植物が暮らすのは、海の中や、ジャングルや、北極圏の野原など世界中で、違う場所なんだけど、同時に夕方を体験している。その同時性にたまらなく心打たれる。繋がってる。共鳴してる。離れてるけど同時にある。ここから見えない場所にも知らない場所にも世界がある。そういうイメージが私は大好きだ。

現実には時差というものがあってそうはいかないわけだけど、でも青い生き物たちは完全にこの現実と同じ場にいるんでなくていい、そこにファンタジーはあっていいんだと思う。

生き物の美しさ、青の美しさ、同時性。わたしの好きなものばかり集められている。それいいよね、そこに感動するよねって、作者と手を取り合ってクルクル廻りたい気持ち。

こういう世界をもっと味わいたいんだ。こういう文学を読みたい。と思っていたものが絵本に表現されていたなあと思った一冊。